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宮尾益知先生のメッセージ

子どもと一緒に暮らしていくこと、大人になるまでのサポート

独立行政法人 国立成育医療研究センター

こころの診療部 発達心理科医長  宮尾益知

今の子供達は変わってきていると言われています。子育ても、親子関係も以前と変わってきています。

どうして変わってきたのでしょうか。そうしてどうしていけば良いのでしょうか。考えてみたいと思います。

子どもが悪いのでも、親が悪いのでも、社会が悪いのでもありません。様々な要因が重なってこのような状況に陥っていると考えられています。子どもとのつきあいは、嵐の思春期、青年期まで、時には成人期以降にも続きます。こうしたときに、ずっと見守ってくれる人がいれば心強いと思いませんか。昔は地域ごとに、兄貴、おじさん、おばさん、長老などがいていろいろアドバイスをくれました。学校の先生も地域の名士としてずっと関わってくれることもできました。しかし今は、地域社会が崩壊してしまい、家制度が滅び、孤立した家族が自分で孤独に子どもと向き合う事が要求されるようになりました。そんな時代だからこそずっと一緒に歩いてくれる専門家が必要なのではないでしょうか。

最近の子どもの特徴として、こんなことはありませんか。

1.コミュニケーションがうまくとれない。我慢やがんばることができず、自分のことしか考えていないようにみえ、先のことを考えていないように思えます。

2.問題行動が低年齢化してきている、以前であれば思春期になってから訪れていた「他の子どもに対して暴力をふるう」といった問題行動が、今は保育園、幼稚園、小学校低学年の頃から見られるようになってきました。

3.突然、変わってしまう子ども「荒れる理由が見当たらない、当人も覚えていない。」など、勉強熱心で頑張っていた子どもが、突然キレるなどの問題行動をおこしたり、普段おとなしい状態から突然暴れだし、子ども自身がはっきり覚えていない。

4.性に関連した行動として、男児では人を攻撃する方向に向かい、時には犯罪を犯してしまう。女児では自分を責める方向に働き、自傷、摂食障害等に向かう。

このような問題が起こる背景には、どのような事があるのでしょうか?

私は、4つの観点から考えるようにしています。

1.子どもがもっている素質:生まれながらにもっている素因(発達障害など)

2.生後の発育環境すなわち、両親との関わり(家族機能)

3.社会との関係:学校など、集団生活での社会との関係

4.思いがけずに起こる、様々なできごとや人との関わり:社会的成熟あるいはトラウマなど

具体的に子どもの心が成長していく過程、段階について述べてみます。

メッセージ1歳頃には、自分はいつも守られているといった愛着がこころの基盤として形成されていきます。親と同じ興味を持ち同じところをみる共同注視が始まり、自分の行動を親に正しいかどうか確認する社会的参照が現れます。この頃は、母親的立場の人が重要です。

2歳頃には、言葉によるコミュニケーションが始まります。自我の目覚めの時期でもあります。

3歳頃には、自分で考えて行動し、人の立場が理解、時に気持ちできるようになります。(自立)
4歳頃には、自分の感情をコントロールする(自律)が芽生えてきます。この時期の社会的規範となるべき立場が父親的立場の人です。

6歳頃には、勉強に必要な能力がある程度身につきます。(学習レディネス)
その後の時期は比較的落ち着いているように見えますが、チック、爪かみなど様々な習癖が現れる時期でもあります。

10歳頃になると、大人と同じ事ができはじめるようになり頭の中だけで計画が立てられるようになり、自尊心がそだち、自己有能感が持てるようになります。ですからこの時期に自己有能感が持てなければ、これからの嵐の思春期・青年期を乗り越えることができません。ここまでが子どもの発達としては重要なキーとなります。

子どもの持っている資質としての「発達障害」、「家族機能」、「学校との関係」など、考えなければいけないことはたくさんあります。

様々な要素が編み込まれながら、子どもは大人になっていきます。そうして、様々な出来事(社会的成熟とトラウマ)と出会って大人になっていきます。

そんな子どもから大人への道筋で、何らかのナビゲーターとして「さとう成育心理相談室」の佐藤先生を考えてみて下さい。

さとう成育心理面接室
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Tel:03-5832-9717

Eメール:sodan@e-satoh.com